海と夕焼け
三島由紀夫が若いころに書いた短編だ。
ある会合で隣の方に三島文学でおすすめ本を尋ねたところ、この本を紹介いただき、早速図書館で探したところかなりよれよれのため、Amazonで購入(「花ざかりの森」)した。
わずか11ページの作品のなかに不思議な読後感を味わった。
主人公の年老いた寺男安里(あんり)が、鎌倉建長寺裏の勝上カ岳に登り、夕焼けの海を見ながら昔話を少年に語る。
エルサレムを奪回せよとのお告げがマルセイユへと少年たちを駆り立て、埠頭で海が二つに分かれるのを待つが、夕日に染まった海はただ波を打ち寄せる。
その後、商人に騙されエジプトで奴隷になり、また売られているうち僧侶に助けられたことがきっかけで、日本へ来て寺男となり20数年が経った。
お涙頂戴話かな?
いいえ、深い味わいと余韻を堪能した。
ことし数年ぶりに建長寺を訪ねたことが、単なる偶然でないような気がした。
月澹荘綺譚
潮騒
仮面の告白
近代能楽集
獣の戯れ
これら推薦本をじっくり読んでみたい。