畦道

久しぶりに田圃の畦道を一人歩いた。 ちょうど稲刈りが終わった時期なので、閑散としており邪魔するものがない。 青い空に鳥のさえずり、傍を流れる川のせせらぎを聞きながら、虫の音を聞きながら、踏みしめる足音を聞きながら二時間近く歩いた。 川に沿った小道がいつになったら道路と交わるのか、戻ろうか、もう少し歩こうか、まぁお昼まで戻ればいいので歩こう。 子供のころ稲刈りが終わった後の田んぼで野球をやったり、穴を掘りテレビで見たゴルフの真似をして遊んだことを思い出した。 ようやく道路に出て帰路を走って帰った。 国道との交差点に差し掛かると、ついさっき自分を追い越して行った車が列を作っていた。なんだろう。 交差点に視線を向けると警察官が立っていたので、事故か?と。その先に群衆が日の丸を振っている。あれっ。 その視線の先を見ると黒塗りの車が近づいてくる。昨日、新幹線を降りると植樹祭のポスターがあちこちにあったことを思い出す。 皇室のどなたかがお見えになったのだ。 警察官に尋ね、皇太子殿下だとわかる。 そして車がゆっくり走り、皇太子様が笑顔で手を振られた。 不思議な感覚がした。 だって先週、東大の伊藤謝恩ホール(お茶で有名な伊藤園の社長が寄付)にて、はじめて間近でスピーチを拝聴したばかりだった。 英語ではあったが、この日のためにご自身の体験も交えた素晴らしいスピーチだった。 私は皇太子の4列ほど後ろに座った。挨拶だけで帰られるのかと思いきや、しっかりオマーンが水資源をいかに大切に、工夫を凝らし活用しているかなどの説明を私たちと一緒に二時間お聞きになった。 その凜とした佇まいに、山岡鉄舟を思い浮かべた。 ゆっくり走り家へ向かった。
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